ウィキメディア財団 年次計画/2023-2024/インフラ
知識というサービスを推し進める
ユーザー体験を向上 特に確立された編集者や役職者向けのウィキで実施する。指標と報告を強化。
まとめ:知識というサービスのインフラ構築
ウィキメディア財団で私たちが行う業務には多くの目的があり、社会技術エコシステムのサポートであると説明されます。製品部門と技術部門はそのエコシステム内で重要なサービスを提供し、新製品の設計と発売、機械学習やインターネットベースの協働作業(コラボレーション)などの分野を革新してきました。今年2023年、財団は製品部門および技術部門を中心にその計画を再構築し、人々とコミュニティが大規模に協力するプラットフォームとして独自の役割を強調しています。
今年2023年の年間計画ならび複数年にわたる戦略計画の両方を検討するにあたり、主要な作業領域の特定にはウィキメディアのこれまでの成功を振り返ったり、運動戦略勧告を推し進めたり、明確で目に見えるロードマップを内外の利害関係者に提供します。 また最高製品技術責任者の新任により長年にわたる技術的な課題に取り組む機会が設けられ、それは次のようなものです。
- どのロードスター指標を採用して財団の影響とボランティア社会の健全性を測定するか、
- 私たちが保持する限られたリソースは、ウィキペディアおよび/または姉妹プロジェクト群においてどのように責任のある方法で管理するのか、さらに
- メディアウィキの将来について、どんな重要な問いかけをしてそれに答えるのか。
今後の製品および技術部門の業務推進に集中するため、目標立案の「バケット」作業担当に〈遊軍〉を指名しました(遊軍=wranglers、製品部門および技術部門の優先順位の決定を担当する人たち。)。これら遊軍グループは計画段階の間に、最高レベルのOKR(目標と主要な結果※)を特定しました(※=objectives and key results)。定義したOKRは各チームに提示して、どんな業務が最も影響力があるか定義する機会を設けました。この段階に基づいてロードマップ作成が始まり、会計年度内になんども見直す予定です。前述の「バケット」と OKR はオンウィキで公開を済ませてあり、コミュニティに呼びかけて初期段階の意見と議論を集めました。
製品部門および技術部門のリソース総体は、そのおよそ半分をこれらの目標達成に集中させます。残り半分は重要な「責任を負って進める作業」に費やされて、サイトとサーバを最新の状態に保ち、攻撃から守り、ソフトウェアの維持とバグ修正、テスト環境の維持が行われます。
ここでは「3つの主要なバケット」(仕分け)を想定しており、その重要な側面とは各バケット内の作業は他のバケットの作業を妨げないことを宣言している点です。私たちが引き続き互いに相談や通知をかわし、作業を可能にする上で必要に応じて協力することを意味しており、計画進行を決定する各チームは別のバケット担当の誰かに作業を中断されません。これにより、私たちはもっと効率的に業務をこなせます。
さらに製品部門および技術部門は計画段階の一環として、全体で一連の構造を変更しました。これら変更の背後に重要な考え方があり、その特徴は次のとおりです。
- 報告体制に常識的な変更を加えます。健全な部門を維持するには、定期的な評価と重要な作業担当チームの調整が必要です。変化の機会として特定した領域には、プログラム管理、データ関連チーム、機能設計チームが含まれます。特定した変化ごとに個人と管理職双方のニーズを慎重に考慮して、長期にわたるメンタリングや支援、賢明なキャリア開発を授けており、財団は年次計画の目標達成に集中できるようにしてあります。役付き以上の職位では単に役職の空席を埋めるのではなく、必要に応じて役職の異動または新設して内部成長の機会を創出します。
- .部門間の明確な優先事項に集中する人手を増やす。来年に向け、製品部門および技術部門の業務全般を対象とするOKRの草案一式を作成し、この作業が財団の他部門全般にどのように影響するか考察しました。場合によっては確立された編集者のワークフローに新たに焦点が当たるように(管理者やスチュワード、巡回やあらゆる種類の仲裁者、役職者とも呼ばれ拡張権限を預かる人を含めて)、管理または構造上の変更や、他の作業の優先順位を下げることが求められます。
- 生産的なコラボレーションの向上。管理と手順に関わるいくつかの決定では、意思決定権の所有者をより明確に直接的に示して透明性を高める設計を施してあります。コラボレーションへの取り組みが増えた恩恵として、長期にわたりチーム間で未解決のまま積み残した問題を提起して体系的に解決できるようになりました。ただし一連の問題もあり、意思決定権の所有者が不明確、役割と役職の未整理、焦点が合っていないなどが言われています。今後は最も重要な目標と明確な意思決定との連携は、部長職と副責任者職の下でどのようなチームを編成するか、その基準の一部になります。
予算の立案:製品部門および技術部門を見回し、予算配分は使途を指定しないリソースの推定50パーセントをウィキ体験※1に、30パーセントをシグナルとサービス※2に、将来の視聴者に5パーセントを、残った15パーセントの割り当て先はインフラと製品および設計サービスの予定です。(※:1=Wiki Experiences。2=Signals and Services。)
次のとおり、最大のバケット2件の目的を区別する簡単な方法があります。一方のウィキ経験の焦点は私たちのコンテンツと相互作用する視聴者で、私たちのウェブのプロパティを介します(ウィキ類、モバイル版アプリ、ツール他)。他方のシグナルとデータ・サービスは当財団のコンテンツ/メタデータを洞察しようとする視聴者を対象とし、コンテンツとサービスに関する意思決定を行い、および/または構造化されたまたはプログラム面の方法で当社のコンテンツとやり取りします。直接および間接の方法で新しい聴衆を私たちの運動に招待することが、「将来の視聴者」が焦点を当てる領域です。
Wiki Experiences |
Signals & Data Services |
Future Audiences |
Foundational Infrastructure |
Product and Engineering Services |
バケット:ウィキ体験
このバケットの目的はウィキ体験を効率的に提供、改善、革新し、世界中でフリーな知識を配布できるようにすることです。知識は人が作るものです! ですから私たちの年次計画は、コンテンツ自体に限らずコンテンツに貢献する人々、アクセスして読む人々にも焦点を当てます。
このバケットは運動戦略勧告の2番(ユーザー体験を向上)、3番(安全と包摂性を確保)、8番(訴求する主題を見つける)と一致します。私たちの聴衆にはウェブ属性の協力者全員、フリーな知識の読者その他の消費者が含まれます。世界でトップ 10 に入るウェブサイトを支え、その他多くの重要なフリーな文化のリソースを促進しています。これらシステムは、世界最大のテクノロジー企業と同等のアップタイム要件を備え業績をあげています。私たちがウィキ類に提供するユーザー・インターフェイスと翻訳、開発者 API(もっと他も提供!)、さらにサポート用アプリケーションおよびインフラがあり、これらはすべて堅牢なプラットフォームを形成し、世界中でフリーな知識を生み出すボランティアの協働に役立っています。
このバケットの目的により、次のことが可能になります。
- コア技術と能力が向上。
- ボランティアの編集者ならびに拡張権限を預かる編集者の体験を確実に継続して改善(役職者とも呼ばれる管理者、スチュワード、巡回者およびあらゆる種類の仲介者を含む)。
- ウィキ体験の改善または強化に取り組む技術貢献者全員の体験を向上。
- 世界中のフリーな知識の読者と消費者に素晴らしい体験を保証。
これらの実現には製品や技術の仕事ばかりではなく、調査や広報連絡(コミュニケーション)、マーケティングも介します。このバケットの目標は3つあります。
私たちが目的とする運用計画の作成は既存の戦略、つまり主に投稿者と消費者とコンテンツの「フライホイール」に関する仮説に基づきます。これらの目的の主な変化はコミュニティの将来の健全性指標の特定を目的として、現在、拡張権利を預かる編集者が私たちから必要とするであろうものを調査する上でフライホイールのコンテンツ部分に重点を置きます。
目標:参照項目はウィキ体験
バケット:シグナルとデータサービス
運動戦略勧告の4番(意思決定における公平性の確保)と10番(評価し反復し適応する)を満たすには、ウィキメディア運動のどの意思決定者も信頼性が高く関連性がありタイムリーなデータやモデル、洞察やツールに触れる必要があり、自分の仕事とコミュニティの仕事の影響評価(実現されたものと潜在的なものの両方)に役立てて、より良い戦略的決定を下すようにします。
シグナルとデータサービスのバケットは、データ洞察の主な対象者として次の4種を特定しました。ウィキメディア財団職員、ウィキメディア提携団体、開発者でコンテンツの再利用者、ウィキメディア研究者です。私たちの仕事はさまざまな活動に及びます。格差の定義、指標の開発、指標を算出するパイプラインの構築、またデータとシグナルの探索経路の開発は意思決定者がデータや洞察とより効果的かつ楽しく対話するのに役立ちます。
目標:参照項目はシグナルとデータサービス
バケット:将来の視聴者
このバケットの目的は、消費者と投稿者という既存の視聴者を超えて拡大する戦略を探求し、フリーな知識のエコシステムに不可欠なインフラとして世界のすべての人に真の意味で到達することです。このバケットは運動戦略勧告の9番(フリーな知識における発明)と一致します。従来の記事を掲載したウェブサイトとは異なる体験や形式で情報を消費する人々がますます増えています。音声アシスタントを利用したり、動画鑑賞で時間を過ごしたり、AI を活用したりなどする人々がいます。この傾向の高まりと、ウィキメディアの認知度と関連性を高める必要性を認識した結果、この1年、ウィキメディアのプロジェクト群の音声ロゴを決める取り組みを進めました。
このバケットでは仮説を提案し、フリーな知識のエコシステムに訪れるかもしれない長期的な未来と、私たちがその時も不可欠なインフラである方法を試します。その実施は製品や技術の仕事に加えて調査研究、パートナー関係、マーケティングも介します。このバケットから有望な将来の状態を特定するにつれて学び取ったことこそ、将来、どんな製品および技術戦略を用いると知識を求める人々にサービスを提供できるかに影響を与えます。 このバケットの目標は私たちを実験と探求に駆り立て、フリーな知識の未来のビジョンに焦点を当てるさせます。
目標:参照項目は将来の視聴者
サブバケット
他に2つある「サブバケット」は重要な機能の領域で構成され、それらは財団が基本的な運用をサポートする上で持ち合わせるべきものであり、その一部はソフトウェア関連の組織と共通しています。これら「サブバケット」ごとに対応する最上位の目標はないものの、他のグループの最上位の目標にインプットを提供し、それらをサポートします。具体的には以下のとおりです。
- 基本的なインフラ。このバケットに含まれるチームは公開サイトおよびサービス運用を可能にするツールとプロセスを管理し、データセンター、計算機およびストレージのプラットフォーム、それらを運用するサービスを維持して進化させます。
- 製品および設計サービス。このバケットには他のチームの生産性と運用を改善するサービスを「大規模に」提供するチームが含まれます。