ウィキメディア概報 (2012年1月)
2012年1月のウィキメディア財団報告書及びウィキメディア技報の抄録ほかウィキメディア運動の重要行事について
ウィキメディア財団概報
歴史上重要な反SOPAウィキペディア暗転を財団が支援
1月18日、英語版ウィキペディアコミュニティは、2つの米国の法案に抗議するためプロジェクトを24時間のあいだ暗転させるとの決断にしたがって、歴史的な行動をしました。両法案、SOPAとPIPAは、ウィキペディアを含む自由でオープンなインターネットを深刻に損なうであろうものでした。他の30のウィキメディアプロジェクトのコミュニティが抗議行動を支持しました。多数の財団職員が、コミュニティの要請にしたがって暗転を行う技術面の実現を行い、議論の進行役を果たし、法的な分析を提示し、かつてない規模の取材依頼と報道に答えることで、この努力を支援しました。
暗転の間、自分の選挙区の政治代表を見つけるために、コングレス・ルックアップ機能を使用した米国の読者は、実に800万人以上にのぼりました。スー・ガードナーのブログ記事には1万3000を超える意見が寄せられ、圧倒的多数が暗転を支持していました。グーグル・ニュースはウィキペディア暗転に関する報道を1万1000件以上掲載するほか、1月18日に催された他のインターネット抗議運動を掲載しました。#wikipediablackoutは約100万回ツイートされました。以来、SOPA及びPIPAへの支持は、ともに衰えています。法案は提案時の様式で法になることはないだろうと、評論家は見ています。
サンフランシスコ・ハッカソン
第1回サンフランシスコ・ハッカソンの出席者は、92人でした。その多くは完全に初めての来場者でした。ウィキメディア技術に関する訓練集会の後、実証企画の共同作業が行われました。共同作業においては紹介集会が行われ、審査員による審査がありました。一等賞は「SMSペディア」が受賞しました。電話番号にページ標題を入力すると、役務提供者から電話が返ってきて、ウィキペディアの項目を読み上げで聞くことができるというものです。
携帯について発表:公式アンドロイド・アプリと、オランジュ社提携(アフリカ・中東でのウィキペディア無料接続)
今回初めてとなる提携により、携帯電話会社オランジュ社とウィキメディア財団は、アフリカ20ヶ国と中東(AMEA)の7000万人以上のオランジュ社の顧客に、ウィキペディアへの携帯接続を、データ使用料なしで提供します。この他今月には、公式のウィキペディア・アンドロイド・アプリが発表されました。本アプリは、最初の2週間で50万回以上インストールされました。
データと傾向
12月の全世界純訪問者数:
- 4億5700万人 (11月比3.7%減、前年比15.6%増)
- (ウィキメディア財団全事業のcomScoreの数値。comScoreは1月の数値を翌2月に発表する)
1月の閲覧要求回数:
- 180億回 (12月比10.4%増、前年比16.4%増)
- (携帯情報端末による接続を含む、ウィキメディア財団全事業。サーバー記録)
2011年12月の活動中の登録編集者数(月間編集回数5回以上):
- 83,293人 (11月比0.1%増、前年比1.6%増)
(ウィキメディア・コモンズを除くウィキメディア財団全事業。データベース数値)
2011年12月の通知表: http://stats.wikimedia.org/reportcard/RC_2011_12_detailed.html
- 通知表をより多機能な計器板(ウィキメディア財団事業に関する様々な集計値や趨勢をまとめたもの)にするための再設計が進行中。
財務
(決算情報は、本報告の2011年12月時点)
次の決算情報は全て、2011年7月1日~2011年12月31日期のもの。
収入: 2560万ドル
支出:
- 技術費: 480万1082ドル
- 共同体・募金運動費: 250万1444ドル
- 全世界展開費: 215万4912ドル
- 統制費: 45万4533ドル
- 財務・法務・人事・運営費: 291万6686ドル
支出計: 1283万8657ドル
総利益(括弧は損失): 1278万4247ドル
収入は、280万ドルの助成金と、予定の200万ドルを上回る寄付により、予算を上回りました。
支出は、当月予算260万ドルに対して実績290万ドルと、予算比11%ほど高い額でした。今年度累計は、予算1420万ドルに対して1280万ドルと、予算比10%ほど低い額でした。
Underspending YTD is due to timing of capital expenditures ($ 989K - budget was spread evenly over 12 months), internet hosting ($ 64K), volunteer development ($ 142K), travel and conference expenses ($ 233K), personnel expenses ($ 584K), recruiting expenses ($ 124K), and IT desk equipment ($ 77K) offset by higher awards and grants ($ 261K - budget was spread evenly over 12 months), legal and accounting fees ($ 81K), professional services ($ 293K), and bank fees ($ 248K). 【仮訳:年度の累積余剰金は、固定資産投資(98万9000ドル。12ヶ月間を通じて常に予算が実績を超過)、インターネット・サーバー賃借料(6万4000ドル)、ボランティア振興費(14万2000ドル)、旅費および大会経費(23万3000ドル)、人件費(58万4000ドル)、求人費(12万4000ドル)、情報技術事務用品(7万7000ドル)の留保によるもので、これらは賞金や助成金の増額(26万1000ドル。12ヶ月を通じて常に予算が実績を超過)、弁護士・税理士費用(8万1000ドル)、専門的役務(29万3000ドル)、銀行手数料(24万8000ドル)で相殺されました。】
現金は、3060万ドル。現在の損益水準にして13ヶ月分、年次計画の14ヶ月分。
その他の活動概報
最近の更新合宿2012
2006年から開催されているウィキとオンライン共同作業に焦点を当てるオープン・スペース非会議RecentChangesCamp2012(最近の更新合宿2012)が、キャンベラ大学で1月20日から1月22日にかけて催行されました。オーストラリア国内外から多数のウィキメディアンが参加しました。
オランダ最古の博物館が編集企画を開始
ウィキメディアオランダ地区会とタイラース美術館(オランダ最古の博物館)が、「ザ・タイラース・チャレンジ」を始めました。博物館とその所蔵品に関して、多言語の作品を共同制作します。
ザグレブ出張 クロアチア地区会を目論む実地踏査
1月20日から1月22日にかけて、ウィキメディア財団理事長の陳霆と、地区会委員会委員のMiloš Rancic(ウィキメディアセルビア地区会)およびBence Damokos(ウィキメディアハンガリー地区会)がザグレブを訪問しました。地区共同体の構成員に会い、ウィキメディアクロアチア地区会(財団公認見込み)の将来について話し合いました。
オーストラリア・パラリンピック委員会とウィキメディア地区会が「試合へのウィキメディアン」を派遣
オーストラリアのパラリンピック委員会とウィキメディアオーストラリア地区会は「Wikimedians to the Games(試合へのウィキメディアン)」を始めました。オーストラリアのパラリンピック運動の歴史に関連する作品を改良する、オーストラリアのウィキメディアンたちのコンテストです。 勝者2名にロンドンへの渡航機会が与えられ、2012年夏のパラリンピックについてウィキニュースやコモンズ、ウィキペディアに寄稿します。
「公知の日」フランスで初の挙行
1月26日、情報公開基金(Open Knowledge Foundation; OKF)の有志やコミュニア、フランス・クリエイティブ・コモンズと共に、フランスのウィキメディア地区会がウェブサイトを開設して「公知の日(Public Domain Day)」の祝賀を催行しました。行事「公知の日」は、毎年の初めに著作権の保護期間が満了して公知となった作品を喧伝するものです。これはフランスで初めての行事でした。