コミュニティ要望調査/要望一覧の将来像/2024年1月4日更新
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コミュニティ要望調査の将来像を共同で作るには
まとめ:2015年以来、コミュニティ要望調査は投稿者にパワーを与え、ウィキメディアのツールやプラットフォームを対象にその改善や新機能の提案と投票を進めてきました。これまでに要望一覧はいくつもの変遷を経ており、2024年には持続型の受付システムに移行して(intake system)要望をめぐる優先順位の決定やリソース配分、意思疎通を改善しようとしています。 新システムの確立まで、コミュニティ技術班※では2024年2月に調査を行う代わりに、監査したばかりの滞留している要望に取り組む所存です。("※"=Community Tech team。)
![カッパドキアの日の出の光景](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d2/Cappadociasunrise.jpg/400px-Cappadociasunrise.jpg)
このところウィキメディア財団の製品・技術部門上席責任者としてセリーナ・ディッケルマン Selena Deckelmann は北アメリカ・ウィキカンファレンスの場で基調講演をしました。 その中で、一方で評論家の一部は主要な技術変化をすべてウィキペディアの死滅の兆候と見なすと指摘し、他方、私たちはウィキメディア運動の将来像に影響を与える複雑な課題がいくつも生じた瞬間にいると提示しました。 これらの課題には一方で人工知能(AI)の台頭、他方で編集者や管理者やページ閲覧数がプロジェクト全体で減少してきたことが含まれます。ウィキペディアもウィキメディアのプロジェクト群も一世代限りの驚異で終わらせず、多世代に広めるには何をするべきでしょうか? インターネットの歴史にはこれまで創造的なプロジェクトがたくさんありながら、社会および文化両面の状況に適応したり、利用者のニーズや利用可能な技術の変化に乗り切れなかったものが無数にあります。 ウィキメディア運動における私たちの成功とは、千人単位のボランティア同士がオープンに進める協働に依存しています。ボランティアの皆さんは世界中で来る日も来る日も、私たちのプラットフォーム上のコンテンツを作成し、アイテム類の選択や整理、管理をしています(キュレーション)。そうなるとウィキメディア財団の製品チームと技術チームの役割は、ボランティアのワークフロー改善の中核となります。 場合によっては、これを大掛かりなプロジェクトとして進めることもできます。財団の2023-2024年度の年次計画では、経験を積んだ編集者のニーズに注力しつつ、技術面のインフラおよびデータシステムの改善に取り組むので、一方では私たちのプロジェクトの構築もそれに立脚しています。また他方で、ボランティアがウィキのあちこちで使う機能やツール、ガジェットを迅速に進化させるには、場合によって小規模なコラボ(共同作業)が欠かせません。
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/05/Community_Wishlist_Survey_Gif.gif/400px-Community_Wishlist_Survey_Gif.gif)
その点、コミュニティ要望調査は2015年以来、その試みを重ねてきました。ウィキメディア財団のコミュニティ技術チームが要望一覧を管理しており、ボランティアやその他の財団の技術系グループ類とともにツールやプラットフォームの改善に取り組んでいます。これらの人々が共同で対処する「要望」はコンテンツの投稿や閲覧体験を支えるものです。年数を重ねて要望一覧は深化し、開発の反復と話題ごとの協議を積み上げて現在の形式に至りました。 例示するなら2015-2020年の時期には、上位10件の要望のうち30件が完了、12件は 却下、3件は未完成です(訳注:総数は10件×5回)。コミュニティ技術班(以下コミュ技術)が2021年に新規の優先順位の枠組みを導入後は、わずか3年で要望40件を完了(コミュ技術の担当分10件、30件はウィキメディア財団の他部署管轄)、 15件は未完成で(コミュ技術の担当分8件、7件は財団の他部署管轄)1件は却下されました。 要望一覧は確かに大切なサービスを提供するのですが、要望をコミュニティと共有するための技術的な手間の面でも、共有する要望の件数でも、ボランティアのニーズに即応できなくなってしまいました。またコミュニティ技術班の側からは、ウィキメディアンの皆さんが技術スタッフやボランティアと協力して最もよく使用するツールや機能に取り組む上で、ウィッシュリストをどれほど大切にしてきたか熟知しています。 これを受けたコミュニティ技術チームはこの1年、多くの時間をもっぱら今後の道のりの考察に当ててきました。ウィキマニア2023では、広範な達成目標を3つ発表し、変更を導く指標としました。すなわち – 1)ウィキメディア財団の年次計画と要望調査の一覧との結びつきを改善すること、2)受け付けシステム(インテーク)にアクセスできる利用者を増やすこと、3)他の技術グループや開発ボランティアとの協働を改善すること。 この場をお借りして、課題の初期段階をお伝えしたいと考えます。
- コミュニティが提示する技術的な要望に対して、新規に継続型の受付システムを構築。現状のプロセスでは技術的な要望を投稿するところから協議ののちの投票まで、数段階を経なければならず、その手間は必ずしも優先されるべき要望の順位に変換されるわけではない点は、不満を生んでいると認識しています。それに代わる新しい受付システムでは、リクエストを提出するコミュニティ参加者にとって明確で直接的な方法の提供を目指しています。 毎年恒例の調査ですから、ボランティアの皆さんが提案を書いたり投票したりすると時間を取られてしまうので、その負担を圧縮できそうです。また、このシステムなら、ウィキメディアのコミュニティ全域から公平さを重んじて要望を集められるし、製品および技術チームにおける作業の配分を明確に見える化してウィキメディア財団全域で把握でき、意思決定の根拠と要望一覧のその時点の進行中の状況を伝える一貫性を高めることもできると期待されます。この新規システムは、2024年後半には試験運用したいと考えています。
- 新受付システムは当チームの年次計画に組み込まれます。要望一覧に提出される願いは、年月につれて複雑になってきました。つまり、取り組む要望1件に対して多くの場合、複数の層の作業が発生し、それを技術的に調整しなければなりません。この問題はすでに財団が取り組んでおり、対策の1つはコミュニティの要望を担当する(財団の)チームを増やすわけですが、共通理解も管理も常に十分な方法だとは言えないと認識しています。 この挑戦により良く対処しリソース配分と協調を適切に行えるように、複雑な要望は財団の年次計画に組み込む作業を構築する予定です。より広範な開発計画のサイクルで動く製品ならびに技術業務と、この受付システムとの橋渡しの主導は新任のコミュニティ技術上席部長※の担当とし、着任を待っているところです。("※"=Lead Community Tech Manager。)
- コミュニティ技術班は当面、滞留分の要望に取り組み、この新システムの始動に備えます。これはすなわち2024年2月には要望調査を実施しないこと、代わりにウィキメディアンの皆さんから優先度が高いものとしてすでに受け取った要望に対処するという意味です。 当チームは滞留分から要望を拾い出して新たに作業を始める時点で、自分たちの現在のプロジェクト一覧に公開して可視化します。それまでの間、当チームは滞留分の上位のプロジェクトを評価して次年度の年次計画に追加できるものを確認し、コミュニティ参加者からそれを改めて提出しなくてすむようにします。 このプロセスではウィキメディアンの皆さんから、直接、発想やフィードバックを共有する方法もあり、発信者は組織レベルでも良いですし、年ごとの製品技術班(Product & Technology)が担当する業務の優先順位に特化してダイレクトに投稿してください。当チームの年度計画の詳細は、例えば昨年分をサンプルにするなら、製品と技術、OKR類、共同作業を参照してください。当チームとしては、新しい年度のプロセスで要望一覧に投稿してくれる人たちに、もっと能動的に参加してもらうにはどうすれば良いか、皆さんから知恵を借りたいと望んでいます。
- より多くのボランティア開発者を要望一覧のプロセスに導き入れるため、コミュニティのウィッシャソンを予備調査中です。新しい受付システムはコミュニティから提出された技術的な問題について、財団(WMF)がよりよく対応するのに役立ち、それとは別に、技術的機能の改善の責任はウィキメディア運動全体で共有されます。この1年、WMFの製品および技術系のさまざまなチーム所属のエンジニアたちはコミュニティ要望一覧を課題に、ウィッシャソンのスプリント形式の予備調査をしてきました。 当コミュニティ技術チームは2024年3月には初めてウィッシャソン※を開催の予定でボランティアの開発者の皆さんにもこのかたどたへの参加を呼びかけて行きます。("※":wishathon=要望+エディタソンのかばん語) コミュニティのウィッシャソンもまた、要望一覧におけるボランティア開発者の役割を強化する大きな取り組みの一部です。 詳細情報は、数週間前になりますが当チームによる公式発表の投稿をご参照ください。
コミュニティ技術チームは1、2月の大半を費やし、コミュニティ技術の新任部長を迎える準備として複数の提出ツールを改善します。その業務の完了後は、新規の受付システムへの取り組みを始めます。この1年にわたりオンウィキと対面イベントの両方で ご自分の考えを共有する時間をとってくださった皆さんすべてに感謝しています。 左記のフィードバックに加えて、チームが指標の調査として投稿した内容は、新システムの設計開始のしっかりした開始点になります。 コミュニティ技術者チーム単体では、より良い要望一覧を作ることはできません。私たちは皆さんと協力したい、もっと多くのコミュニティとよりよく関与する方法、もっと利用者に使いやすい提出手順探し、要望に関する透明性と意思疎通の向上、さらにウィキメディア運動内にあるその他の技術的な要望一覧との連携など、さまざまな主題を考えています。 より多角的な視点からの反応にも注目しており、すでに要望調査に関与しているウィキメディアンの皆さん、現状の形式だと声が十分に届かない人たち、ボランティアの開発者の皆さんを含めています。こうした広範なアウトリーチにより、私たちのコミュニティによりよく役立つ要望一覧にしていけるはずです。最後になりましたが、このコラボは今後の展開の礎として、新しい要望一覧のテストと改善、進化に役立つよう願ってやみません。 皆さんから、特に共同で未来をどのように設計するか、当部門のトークページにて質問や意見の投稿をお待ちしています。あるいはまた、対話:2024にて、私つまりルーナ・バッタチャルディ Runa Bhattacharjee あるいはセリーナ・ディッケルマン Selena Deckelmann 宛にご連絡ください。
–– Runa Bhattacharjee 製品上席部長 - ウィキメディア財団言語とコンテンツ発展部門